Above_arve henriksen
chiaroscuro
2005
Below_James
Pleased To Meet You
2001

2009.3.01

今月はお気に入りのCDジャケットから2枚をピックアップ。ぼくはどちらかといえばジャケ買いする傾向が強いけれど、当たったり外れたりで、打率は3割台といったところか。
上はノルウェー屈指のインストゥルメンタリスト、Arve Henriksen(アルヴェ・ヘンリクセン)が2005年に発表したアルバム『Chiaroscuro(キアロスクーロ=光と影)』。雑誌のレヴューで見かけて注文し、届いてその素晴らしいジャケットデザインに大喜びした思い出の一枚だ。あ〜、こんなキュートなデザインがしてみたい!
CD本体は濃いグリーン地に手書きのドット模様が入っているだけなので、ジャケットと一緒にしておかないと何のCDなのかわからなくなってしまうけど、それにしてもこのジャケットは頭のてっぺんからつま先まで、何てクールで可愛らしいんだろう。包まれたサウンドも北欧らしい澄んだグレイシーなトーンでとても清々しい。谷を吹き渡る風のようなトランペットの音色に導かれ、達人ヘンリクセンが描き出す心地よいサウンドスケイプがゆったりと楽しめる。そこにはバリ・サウンドやモンゴルのオーヴァートーン歌唱、そして琵琶や尺八までが果敢にブレンドされていて、さながら、言葉のない歌が翼をつけてのびやかに澄み渡った空を飛び回っているようだ。同じトランペット奏者である環境音楽家ジョン・ハッセルの奏でるアフリカの大地のような熱を帯びたサウンドとは対照的に、静寂と湿気を含んだ北欧の青く静かな熱がじわりと伝わってくる。ミニマルなのに豊潤。このサウンドはジャケットデザインと見事にシンクロしている。
さてもう1枚は、イギリスはマンチェスター出身のロックバンド、James(ジェイムス)2001年のアルバム『Pleased to meet you(プリーズド・トゥ・ミート・ユー)』。この他にも『WHIPLASH』や豚が真珠のネックレスを巻いた『millionaires』とか、斜に構えたアルバムがたくさんあるけど、やっぱりぼくはブライアン・イーノがプロデュースしているこのアルバムが一番好きだ。こういうバンドは絶対にアメリカからは生まれてこないだろう。あちこちが微妙にねじれているのだ。ツイストしてるのは音楽への向き合い方なのか、それとも性格そのものなのか。このツイスト感がイギリス音楽好きにはたまらない。
それは、この変哲のないジャケットデザインにも現われている。中を開くと1ページに1カットづつ、同じトリミングでバンドメンバーのポートレートが載っている。しかし、表紙を飾るこの男性は誰なのか?この人物を入れるとメンバーは一人増えてしまうのだ。しばらく眺めていると、あることに気づく。どこか見覚えのあるパーツ…、それは眉であったり、目であったり、耳であったり…。そうかこの表紙の男性はメンバー全員のパーツが集合された架空のもう一人のメンバーだったのだ。つまり合成された彼自身がジェイムズその人であった。一見よくありがちなロックアルバムのカバーに見せておいて、ひっそり仕掛けが施されたデザインも見事にねじれていた。
iTunes Storeでホイホイとダウンロードしていると、絶対こんな楽しみを味わうことはできない。ジャケットデザインがある限り“物質としてのコンパクトディスク”はまだまだ健在だ。