from Music Video of
Cobra Starship & Sabi
“ You Make Me Feel ”
Dancing with The Stars Season
13 Week 9 Results Show November 15, 2011
& 2011 WMG. Cobra Starship’s music video

2012.6.01

TVはあまり観ないが、それでも気が向いたときにはリモコン片手にチャンネルサーフすることもある。で、たまたま先日観たのがテレビ朝日の深夜番組『ベストヒットUSA』。ナビゲーターは長年洋楽を日本に紹介し続けてきたDJの小林克也さん。この道の草分けともいえる人で、「Snakeman show」のあのとぼけた味わいが好きだったぼくが、ずっと親近感を抱きつづけていたDJだ。

その克也さんが当夜紹介していたのが、コブラ・スターシップ(Cobra Starship)というNYのポップ・パンクバンドだった。彼らのヒット曲『You Make Me Feel…』は、サビ(Sabi)という話題の新人女性アーティストとのfeaturing(客演)によって大化けした曲なんだとか。こういった現象は最近よくみられるケースで、ミュージシャン同士には時に不思議な化学反応のようなものが発生することがあるみたいだ。コラボのようにガップリ四つに組むのではなく、フィーチャリングという醒めた距離感が、そうした化学反応を引き寄せるのかもしれない。

そういえば5年ほど前だろうか、日本でもSoul Jaが青山テルマをフィーチャリングした『ここにいるよ feat.青山テルマ』という曲がヒットしたことがある。すると今度は青山テルマがSoul Jaをフィーチャリングしたアンサーソング『青山テルマfeat.Soul Ja / そばにいるね』が発表されて、これまた連鎖するようにヒットした。たしかに『ベストヒットUSA』のチャート上位にも「feat.」と挿入されるタイトルがたくさんあって、フィーチャリングブームはけっこう根強いのかもしれない。ぼくは、ぼく、君は君、でもちょっとだけぼくと君でやってみたら案外イイ感じじゃない、といった感覚に近いのだろうか。コブラ・スターシップのヴォーカルのゲイブ・サポータ(Gabe Saporta)もインタビューではそれに近いコメントしてたし。

やがて『You Make Me Feel…』がTVから流れてきた。ちょっと昔ヒットしたテクノポップ『ラジオスターの悲劇』(バグルズ)を思わせるアレンジで、そうか、今アメリカでヒットする曲ってこんな感じなんだと聴き入った。YouTubeには同じ曲のLiveバージョンもアップされていて、レアル・マドリードのサッカープレーヤー、クリスティアーノ・ロナウドに似た伊達男のゲイブは、しなるバネみたいな身のこなしでこの21世紀初頭版ラブソングを披露している。

ところで「ザ・ヴォイス」と称されるスターのご本尊、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)がとばした数々のヒット曲の中に『フライミー・ツー・ザ・ムーン(Fly Me to the Moon)』という曲がある。これがヒットしていた1960年代は、アポロ計画の真っ只中だったこともあり、宇宙船にも積み込まれたりして、人類が月に持ち込んだ最初の曲としてもつとに有名なんだけど、元々はジャズのスタンダードナンバーだったという。それはこんな歌。

Fly me to the Moon

(私を月に連れてって)

作詞・作曲:Bart Howard

Poets often use many words to say a simple thing.
It takes thought and time and rhyme to make a poem thing.

With music and words I’ve been playing.
For you I have written a song
To be sure that you’ll know what I’m saying,
I’ll translate as I go along.

Fly me to the moon, and let me play among the stars.
Let me see what spring is like on Jupiter and Mars.
In other words, hold my hand!
In other words, daring kiss me!

Fill my heart with song, and let me sing forever more.
You are all I long for all I worship and adore.
In other words, please be true!
In other words, I love you!

人はいつだって単純なことを伝えるのに、様々な言葉を使うわ

たったひとつの詩を歌うために悩んで、時間をかけて音を乗せる

音楽と言葉を添え、思いを伝えよう

あなたのために歌を書いたの

あなたならきっと私の言っていること、分かってくれると信じてる

聴いていくうちに、分かるはずだから

私を月に連れてって

星たちに囲まれて遊んでみたいの

木星や火星にどんな春が訪れるのか見てみたいわ

つまり、手を繋いで欲しいってことなの

だからその…キスして欲しいの

私の心を歌でいっぱいにして

ずっとずっと歌わせて

あなたは私がずっと待ち焦がれていた人だから

憧れ慕うのはあなただけ

だからお願い、変わらないでいて

つまりその…愛してるの

想いは地上から空へと昇り、やがて地球を離れ、宇宙空間にまで旅立っていく。

でも、結局、つまるところ、要するに、簡単に言えば、ぶっちゃけ、正直なところ、一言で言うならば、つまりその…「愛してる」ってこと。コブラ・スターシップだって、シナトラだって、世にあふれる音楽の多くはこのシンプルな心情に収斂されていく。もちろんそこには異性感情だけでなく、多種多様な「つまりその…」が潜んでいるが、その普遍性は一貫して揺らぐことはない。

10代前半の頃、ぼくはラジオから流れてくる文化放送の番組「9500万人のポピュラーリクエスト」を毎週チェックしていた。パーソナリティは、ダークダックスやボニージャックス、スリーグレイセスなどの育ての親でもある小島正雄氏。(でも、54歳で急死してしまった)そこで毎週紹介される、ビルボードキャッシュ・ボックスの全米チャート情報を心待ちにしていたぼくは、一喜一憂しながらランキングチャートまで手作りしては楽しんでいたものだ。

当時ヒットしていた『ワシントン広場の夜は更けて(The Village Stompers)』やガス・バッカス(Gus Bakkas)の『恋はスバヤク!(Short On Love)』などを押しのけて、やがてチャートを席巻しはじめたのはイギリス生まれのフレッシュなバンドたち。例えばマンフレッドマン(Manfred Mann)の『Do Wah Diddy』とか、ハーマンズ・ハーミッツ(Herman’s Hermits)の『ミセス・ブラウンのお嬢さん』などがヒットしていた。今聴くと、なんともまあ無邪気で健康的なスマッシュヒットばかり。もちろんすぐに飽き足らなくなり、もう少し骨のある音楽が欲しくなる。するとすぐにキンクス(The Kinks)やアニマルズ (The Animals)といったバンドが『ユー・リアリー・ガット・ミー(You Really Got Me)』や『朝日のあたる家(The House of the Rising Sun)』といった曲をたずさえてやってきては、そんな気持ちに応えてくれた。

ヒットチャートは音楽の館の玄関のようなものだった。少年はその時どきのヒット曲を通じて時代意識を嗅ぎ取っては、共感の波に身を委ねる。やがて音楽鑑賞の旅をはじめた彼は、そこからさらにディープな音楽の世界を求めては次々と館の中にある扉をノックしてゆく。

こうして、シャンソン、ポップ、ブリティッシュロック、リズム&ブルース、カントリー&ウエスタン、パンク、レゲエ、レイドバックからモータウンミュージック、プログレ、テクノ、ラテン、J-ポップ、ワールドミュージックやアンビエントと音楽遍歴を重ねていく。するともう、気分はすっかり音楽評論家気取りで、お気に入りミュージシャンの数だって半端じゃない。しかし、そうしてストックされた音楽のおびただしい多様性の内側には、いつだってあの普遍「つまりその…」が横たわり、ぼくの心を歌でいっぱいにしてくれる。そしていつまでも「だからお願い、変わらないでいて。つまりその…」とリフレインしつづけている。