Left_2003 Feb. Esquire Cover
Right_2007 Jun. Esquire Cover
Copyright : Esquire Magazine Japan

2007.7.01

職業柄、雑誌を何誌か定期購読している。中でも10年以上に亘る長期講読は「エスクァイア日本版」の一誌のみ。その歴史はとても古く、1933年に「米版エスクァイア」が男性誌として創刊され、日本版も今年で創刊20周年を迎えるというのだから、老舗商業雑誌の代表格といえるだろう。米日の他に韓国、中国、台湾、タイ、インドネシア、香港、トルコ、それにオランダ、ギリシャやロシアと、ワールドワイドに展開されているこのカルチャーマガジンは、「Art of Living」というフレームの中に筋金入りのエスクァイア・ワールドを構築してきた。これだけの歴史と広がりをもつ雑誌は世界でもそう数多くない。
新しい時代を映す教科書のような雑誌だという評価もあれば、見方によっては広告以外の誌面も商品カタログとして機能する洗練された大人のセレクトショップ・マガジンだという見方もある。いずれにしても、長きに亘って安定した読者層に支持されてきたのは、伝統的に継承されたその編集能力に拠るところが大きいのだと思う。当たり前のことだけど、雑誌の質と完成度は掲載情報をいかに削ぎ落とし厳選するかといった選別能力に大きく左右される。
しかし、ぼくが惹かれ続けている理由はそこにあるのではなくて、そのデザインにある。AD(Art Directior)は、この10年ほどずっと桜井久さんが担当している(初代ADは木村裕治氏)。an.an、ポパイ、Olive、BRUTUSなどのADとして雑誌の黄金期を築いた、洒脱の巨星と呼ばれる堀内誠一以後、マガジングラフィックス界には3本の大きな流れが生まれたと言われる。木村裕治、岡本一宣、そして藤本やすしの3氏を源流とする系譜の誕生だ。この桜井さんは御三家の一人藤本やすし氏が1983年に設立した「Cap(キャップ)」の創設メンバーにも名を連ねているベテラン・デザイナーだ。
とにかく桜井デザインは決して前に出過ぎることがない。そのさじ加減は絶妙で、つくづくこれはプロの技だなぁ、と感嘆させられる。フツーの中にその雑誌特有の芳香と時代の空気感を漂わせるのは、実はとてつもなく難しいことである。マガジングラフィックには、写真や文字を自在にコントロールする高度な技術と、常に時代の匂いを嗅ぎ分け必要に応じて微妙に誌面をデフォルメし続けるという繊細で柔軟な技が要求されてくる。まさに雑誌は生き物。時代に寄り添って呼吸し続けなければ、あっけなくその生命力は失われてしまう。そこに雑誌づくりの難しさと面白さがあるのだと思う。